６世紀に建造された、地上に現存する最古のモスク。その中庭を囲む美しい回廊です。
床には濃淡の大理石が敷き詰められ、壁には精緻なモザイク文様で、ムスリムの楽園の象徴である緑のオアシスが描かれていました。砂漠で生まれた信仰が豊かさのシンボルとするのは、何よりも豊かな緑と水なのだと実感する眺めです。
入り口では裸足になり、さらに女性は大きなフードを借りて手足をすっぽりと覆い隠すのが作法です。照りつける強い陽射しと青く澄み切った空、くっきりと切り出された石造りの建物の対比があざやかで、この中庭の中央には涼しげな噴水がありました。

偶像崇拝を禁じるムスリムでは、人物画に代わる装飾としてモザイクが発達したため、ダマスカスの市場（スーク）ではたくさんのモザイク製品が売られています。
そのスークをそぞろ歩いていた夜、綺麗なモザイクの箱が詰まれた店先を眺めていたら、店のおじさんから声をかけられ、
「ＯＫマドモアゼル！ここに並べられている品に満足しないとはお目が高い！実はこれらはプラスチックであり、本物の貝を使ったモザイクは店の中にある！今からそれをお目にかけよう！！」
とかなんとか引っ張り込まれてしまい、一瞬げげっ…と思ったのですが、店の奥には一目でモノが違うと分かる本物のモザイク製品が。
それから何杯ものお茶と、双方に取ってエンターテインメントでもある値切り交渉を経て、なごやかに商談成立。買い求めた２つのモザイクの箱のうち、ひとつはヨルダンで待っていた友人の家に収まり、ひとつは母へのお土産になったのでした。

シリアの旅を思い出すにつけ、今の状況をニュースで目にするたびに胸が痛み、ダマスカスのスークで話し込んだおじさんたちも、パルミラで長いお茶の時間を楽しんだおじいさんも、道端に干してあるデーツを枝ごと笑顔で手渡してくれたおばさんも、みんな無事でいてほしいと心から思います。