いにしえの教えにも、「物事は慣れたと思った頃に足元をすくわれる」と申します。本日はそんな教訓のお話です。

　あれは３年ほど前の秋、諸事情で数か月ほど国外逃亡したことがありました。まったくの白紙状態でとりあえずフランスに飛んだ後、仰天した友人の紹介で、オーヴェルニュ地方にある山深い僻村の農家でお世話になることに。ここでの数週間がどんなに心身を癒してくれたかはまた後ほどお話しするとして、そんなある日のことです。
　お隣（といっても歩いて１０分くらい離れている）のおじさんが車で街に下りるというので、一緒に乗せていってもらうことにしました。途中で下ろしてもらった場所は、イソワール。とても小さな街ですが、サン・オストルモワンヌ教会というロマネスク建築があり、そこの素晴らしい柱頭彫刻群をぜひ見てみたかったのです。

　駅の方から歩いていくと、祭壇の外側に当たる半円形の壁が見えてきます。わあお！早く中に入ってみたい、しかし焦ってはいけない。何故ならこれまでの見聞から、よく見れば建物の外側にも興味深いものがたくさんあるのだということを学んでいるからです。
　高鳴る胸を抑えつつ、外壁をしげしげと眺めていると案の定、妙なものを発見しました。…なんだこれ？
　

　たくさんの脚とつぶれた胴体という変な造形。そしてあまり芳しからぬご面相。しばし考え込んだ後、わたくしめは深く頷きました。…わかった。
　これは邪悪なカエルだな。

　うんそうだ、ほら、建物の外側には魔除け的な意味合いで怪物を飾ったりするじゃん？　日本でも鬼瓦とかシーサーとか。そうそうあれの仲間だね、間違いない。
　いやあ、こういうのもいろいろ見てると解説なしでもわかってくるもんだなあ…と自画自賛しつつ教会の中に入り、１９世紀に彩色修復を施したというあざやかな柱頭彫刻を見て回っているうちに、ふと隅のパネルに目が留まりました。
　そこにはあの邪悪なカエルの写真とともに、「外壁を取り囲む黄道十二宮＠カニ座の彫刻」という解説が。
　カ、カニ？！　あれってカニだったの？！
　

　慌てて外に飛び出して見上げるに、確かに脚は８本で両手はハサミ、左右にはふたご座としし座の彫刻が配置されている。うーむ。ここは内陸の土地だから、製作者は本物のカニを見たことがなかったのかもしれない。でもって周りの人たちも、「これがカニという生き物である」と自信満々に見せられれば、「なるほどー」と素直に納得してしまったのかもしれない。
　いやはや、ロマネスク彫刻の世界は奥が深い。少しはわかってきたなんて、とんだ思い上がりであった。もっと謙虚に、もっと虚心坦懐に、真摯な心で対象と向かい合って学びを深めていかねばならない。
　しかし…しかしだな…
　

やっぱ邪悪なカエルだよ、これ。

　

　歩かざる者食うべからず。
　在宅ワークの運動不足解消にと始めた朝食前の早朝散歩、当初は１時間弱だったのですが、己に負荷をかけるのが好きなセルフSM体質のせいか、気がつけば２時間近くの長さとなり、おかげで自宅に辿りつく頃には空腹で遭難寸前の状態です。
　でもまあ、いい運動にはなっているんだろうな…と思っていたある夜、お風呂に入ろうと服を脱ぎ捨て、なにげなく鏡に目をやりましたらば、ひねった腹部にくっきりと浮かび上がるふた筋の縦線。
　…腹筋、割れとるがな。

　いや腹筋体操なんて何もやってないよね？！　ウォーキングってそんなハードな運動だったっけ？！　だから男性に間違われたのか？！

　と無数のクエスチョンマークが飛び交う中、ぐったりと湯舟に浸かって就寝しました。以来も変わらず散歩の習慣は続き、朝食は最高においしく、腹筋はやっぱり割れております。



＞かのんさま
　特大の！ちゅーを！！　確かに頂戴いたしました…（じっくりしみじみ堪能中）。
　全身で「おかえり！」と言って下さっているのが伝わってくるような温かいメッセージ、本当に嬉しいです。なんという無沙汰をかましてしまったのか…ごめんなさい…。
写真もお楽しみ頂けて何よりです！（きっと以前ご覧になったことのある懐かしいものもおありかと…）　旅の話や風景を喜んで下さるとは、なんて心の広い優しい方々なのだろう…と、こうした折には今もって驚きと感謝の念に包まれるのですが（←心の狭いマウンテンゴリラ）、その驚きと感謝こそが、放浪したくてもできない現状に枯渇寸前の心を潤して下さるのだと、改めて思います。同じく在宅ワークのお仲間、心からのお返しちゅーをお送りいたします！よけてー！
PS：　DIY！　状況が落ち着いてご注文があればいつでもご用命を！！　（笑）
　

青鳥を下さった芥瑚方へ

＞ひるねさま
　新しいHNですね！　（と末尾のお名前を拝見してすぐに分かりました！）
　本当にご無沙汰をいたしまして、ご心配をおかけしたこと、深くお詫び申し上げます。何かこう、怪我をした動物がじっとうずくまって、冬眠状態で体力と気力を温存しながら治癒を待つ…というような感じでした。日頃から野生動物のようだな、と自らを思い、周囲からもまたそのように指摘されるのですが、やっぱりその通りだった！（笑）
　ひるねさまもあわただしい日々をお過ごしだったとのこと、GWは少しでもお休みになれたでしょうか。桜の盛り！という北の地に思いを馳せながら、お久しぶりかつ心からのご挨拶をお送りいたします。こちらは薔薇が満開です！

＞K・Iさま（イニシャルでお分かりいただけるかな…）
思えば通販の際にも、またお正月にも、折に触れてお気遣いのメールを頂いていたのに、この不義理の限りを尽くしたサイトを、しばしばご訪問下さっていたとは…。お便りでそれを知って、ありがたさと申し訳なさでしばらく顔を上げられませんでした。本当にありがとうございます。はい、ただいま帰って参りました！！
Library内に収録した風景は、まだご縁を頂く前のものだと思いますので、ご心配をおかけしてしまった分、ささやかながらお楽しみ頂ければすごく幸せです。
わたしの方こそ、お便りを頂いて胸の中が明るく晴れ渡るような心地になりました。今日の東京は初夏の嵐といったお天気ですが、心は五月晴れです（笑）。本当に、頂いたお便りとお気遣いに重ねて心からお礼を申し上げさせてください。
ありがとうございます！
　

　放浪できないなら、過去の放浪を楽しめばよろしい。
　そう思うことができるようになるまで、やはり１年以上かかりました。空腹状態マックスのときに、「んじゃケーキ食べれば？」って言われたら「メインディッシュよこさんかい！」って暴れますよね！
　でも今はケーキでいい。いや、甘味の滋味、その奥深さを楽しめる大人になった。今はプリンが食べたいな。しっかり固めでカラメルの苦みがきいた、バケツくらいのカスタードプリンが！

　という次第でして、愛するマドモアゼル方。
　サイト内ページの修正もなんとか一息ついたGW半ばの本日は、Libary内に新しい項目を追加して参りました。煩悩シアターの舞台裏、あるいは放浪の記録ともなるこのコーナーには、過去にサイト正面玄関や企画ものを通してお届けしてきた風景を、これから順次追加していく予定です。 自由な旅行が叶わない今だからこそ、こういうものをお届けしたい。
　もし、「昔の雑記に書いてあるこの風景を見逃してしまった」、あるいは「以前に見たあの写真をもう一度見たい」などのご要望がありましたら、どうぞお気軽にお知らせください。過去のファイルから鋭意優先発掘して、喜んで追加させて頂きます！

　同じくLiberary内の各ページも、見やすいようにレイアウトを修正しましたので、GW中にバック・トゥ・ザ・フューチャー（！）を志される芥瑚方がいらっしゃいましたら、ささやかなりともお楽しみ頂けますように…。（もしまだ表示のおかしな箇所があったら、こちらもご遠慮なくお知らせくださいね）