＞Ｒ・Ｋさま
　お見送り青鳥を頂いたときには、おそらくすでにコーカサスの地をほっつき歩いていた頃だったでしょうか（笑）。温かいお気遣い、本当にありがとうございます。
　直前に体調を崩したまま出発したのですが、旅の空気に触れたとたんに劇的に快癒、そしてわずかに残った疲れも、宿のおじさんに勧められたヴォトカを煽った２分後に完全霧散 しました。なんという百薬の長…！これからは自宅にもヴォトカを常備しようと固く心に誓った次第です。（モスクワという銘柄だった）
　写真もコンスタントに変えながらお届けしますので、どうかお楽しみ頂けますように…！

＞杏さま
　いえいえ、この秋はただでさえ天候不良で大変だったのですから、どうぞ寝ていらして！（笑）
　あの辺りは確かに政治的に不安定な地域ではあり、例えばアルメニアは隣国のアゼルバイジャンとトルコとの国境を閉鎖中、ジョージアは 隣国ロシアと緊張を孕んだ関係で、どちらの国も領土内に主権の及ばない自治共和国があったりして、チェチェンやナゴルノ・カラバフなどの紛争の種にも事欠かないのですが、だからこその多様性が素晴らしい、魅力的な地域でした…。
　うむ、ここでひとつお役立ち情報をば。ジョージアは数年前に日本からのビザは廃止済み。アルメニアは必要で入国時に取得と聞いていたのですが、こちらも必要ありませんでした。最近廃止されたらしく、入国はビザ要らずの一発ＯＫです！（…と聞いて行かれる方が実際にいらっしゃるかどうかは別として…トリビアだけでも…ぐぬぬ…）

＞Ｈ・Ｆさま
　…あのですね。前回雑記からお届けしたお返事青鳥の文面、あれだけを見ますと、めっちゃシモネタに見えますね…しかも品のない…。気づかなかった、本当にごめんなさい！（←シモネタには一定のクオリティを求めるめんどくさいタイプ）
　言語。分からない言葉に囲まれているのが心地よく、多言語の選択肢がある方が圧倒的に風通しが良いというのも、相当めんどくさいことだとしみじみうなだれつつ、それでもこうやってＨさまやたくさんの方々と意思疎通ができて、実際にメールやイベントでお話しすることもできるのだと思うと、やっぱり言葉をおろそかにするのは自分の根本や他者に対する態度をおろそかにするのと同じことだと強く思います。
　また新しい風景も続いてお届けいたしますね。食欲の秋ですから、その辺りで是非！（笑）

　

　放浪から戻って参りましたー！！

　おお、お久しぶりでございます、愛するマドモアゼル方。お元気でいらっしゃいましたか？　今年はですね、今年は……
　コーカサス地方に行って参りました。
　国でいうとジョージア（旧名グルジア）とアルメニア。位置でいうとロシアの南でイランの北、東西をカスピ海と黒海に挟まれた、広大なコーカサス山脈の南に広がる地域です。
　そこをふらふらと足の向くままに放浪しながら、ジョージア北部の山に登ってみたり、アゼルバイジャン国境近くの修道院を訪ねてみたり、アルメニアの渓谷に点在する教会を巡ってみたり、トルコ国境に近いアララト山の方に行ってみたり、うっかりイランまで足を延ばしたくなってぐっと堪えたり、たくさんの人たちの親切を受けて食べ物はどれもおいしく、本当に充実した素晴らしい旅でした。
　ああ、ほんとに楽しかった…！！！

　コーカサスに行くというと、「それどこ？」に続いて「なんでまたそこへ？」と聞かれることが多かったのですが（笑）、以前からうすぼんやりと「いつかは行くのかも…」と感じていた地域でした。
　というのも、たとえば映画監督のイオセリアーニがジョージア出身、パラジャーノフはアルメニア出身。ジャズピアニストのティグラン・ハマシアンもアルメニアの出身なら、「百万本の薔薇の花を」という歌のもとになった画家ピロスマニもジョージアの生まれ。…とこのように、好きなもののピースがいくつもこの地方にはあると気づいてはいたのですね。
　で、今年の秋が近づくにつれて、何故か訳も分からずボロディンの「だったん人の踊り」という曲のメロディが脳内でエンドレス再生を始め、首をひねりながらウィキペディアを覗いたところ、「ボロディンの父親はグルジアの出身だった」という表記を目にするに及んで、
　なるほど…　風はコーカサスに向かって吹いているのか…　四の五の言わず行ってこいってことなんだな！よしきた了解！！
　と、まことに都合のよい自己解釈を下してとっとと出奔した、そして結論として大正解であった、という次第なのでございます。…こほん（照）。


　で、愛するマドモアゼル方。
　まずはお土産の新しい風景をお届けいたします。（これを忘れては立つ瀬がない！）
　道中何度も「おお…これは皆さまのお目にかけたい風景だ…！」と感嘆しながら切り取ってきたたくさんの風景の中で、最初はジョージアから。
　早朝、首都ティビリシから乗り合いバスで北上して、ステパンツミンダという小さな村に着いたのがお昼過ぎ。もう二十キロも行けばそこはロシア国境という僻地で、あまりに美しい山々の眺めにとてもじっとしていられず、宿に荷物を放り込んでさっそく山登りに向かいました。
　教会の建つ山頂までの山道はなかなか険しく、タクシーを使う人がほとんどだそうなのですが、野宿も平気なケダモノ（ぷぷ）にはまるで苦にならず、全身が染まってしまいそうなほど見事な黄葉のアーチを通ったり、木立ちの合間から覗く雪山の峰々に見とれたりしながら、休憩なしで一時間半くらい。辿りついた山頂には、息を呑むような絶景を背に、素朴で美しいジョージア正教の教会が建っていました。
　愛するマドモアゼル方。正面玄関に飾った秋の山道をクリックして、遥かな山頂の眺めをご覧下さいませ。コーカサス南麓、ゲルゲティ山の頂上に建つサメバ教会です。

　このとき、ちらほらと雪片が舞ったりもしていたのですが（大きな写真の中にも白い点のように雪が移りこんでいるのがご覧頂けるでしょうか）、お天気はとてもよく、明日また来てみようかなー♪などと思いながら下山してぐっすり眠ったその翌朝。
　カーテンを開けてみると、窓の外は真っ白かつ大荒れの猛吹雪でした。
　山の気候は変わりやすいと申しますが、あんな激変はちょっと見たことがなく、一歩外に出ただけで窒息しそうになるので、その日は一日中暖かい室内にいて、宿のおばあさんがヒンカリという大きなジョージア風水餃子を作るのを手伝ったり、子供たちに木屑がくるんと丸まったようなジョージア文字のアルファベットを教わったりしながら過ごして、予想外のギフトのような楽しい一日になりました。
　翌日も降り止まない雪の中、山を下ってバスの通る道までおりなくてはならなかったのですが、すっかり仲良くなったおばあさんが心配しながら、「わたしの可愛い子供、わたしの赤ちゃん」と言いながらストールをぐるぐる巻きにしてくれたことを、温かく思い出します。
　あ！　ちなみに少し前にお話した各国で異なるご挨拶方式ですが、ジョージアとアルメニアの皆さまにおかれましては、「ハグに続いてキスは片頬に一回だけ、しかしその一回がとても大きい」であったことを謹んでご報告申し上げます。


　昨年のウズベキスタンに続いて、ローカルの言語が分からない国々を放浪したことになるのですが、遅まきながらようやく気づいたことがありました。
　折に触れて周囲の人たちから、「辺境なら日本にもあるよ、きっと楽しいよ」と勧められて頷きながらもそうしない理由が自分でもよく分からなかったのですが、それは「異なる言葉が聞こえる場所に行きたいから」だったのですね。
　以前の雑記で、「定住することにある種の怖れがある」と申し上げたことがあるのですが、おそらくその理由の半分は「言語」にあります。多言語が交じり合う社会で生活していれば、好きなときに一歩引いて母国語に戻るという自由が得られますが、ここにいるとそれがない。「単一言語の中に閉じ込められる閉塞感」に息苦しさを覚え、しかもそれは他ならぬ母国語であるという罪悪感が重なって、時々どうしようもなくなるんだな…と気づいたのです。
　知らない文字と分からない言葉に囲まれていると、心底落ち着くのを旅先で自覚しながら、しかしなあ…気づいたところでどうにかなるストレスじゃないしなあ…ぼちぼちやってくしかないか…あ、ほら、人は歳を取るにつれて母国語に執着するようになるっていうし、死ぬまでには何とかなるかも！　うん、こういうときにはめったに食べない甘いものを食べよう！　すいませーん！　コーヒーのおかわりと、そこのチーズケーキと杏のタルトを下さーい！
　と、エネルギー補給に励んだ異国の昼下がりだったのでした。


　それでもやっぱり、こうして戻ってきて皆さまにご挨拶できることは本当に嬉しく、幸せなことだと純粋に感じます。多分、自覚できている以上の僥倖なのだと、サイト開設から十年以上がたった今でも、折に触れてそう思います。
　出奔の前後にお見送り＆お迎え青鳥を下さった芥瑚方。後ほどすぐにお返事をお届けしますので、もう少々お待ち下さいね。楽しかったからこそ、帰ってこられるのも嬉しいというものです。
　何はともあれ、ちゃんと御前に戻って参りましたー♪（大きく手を振りつつ帰山のご挨拶）


　

　あわわ、こんなにインターバルをあけるつもりじゃなかったのに…しかも放浪の前に！
　このところ少し体調を崩しておりまして、珍しく高熱なんか出ちゃったものですから、ご挨拶が文字通りの直前になってしまいました。（今日ちゃんと病院で薬をもらってきた！大丈夫！）

　愛するマドモアゼル方。
　毎年この時期恒例のご挨拶ではございますが、今年もまた出奔の季節がやって参りました。明日１１日（水）から２６日（木）まで、放浪麒麟はつかのま御前を離れ、大陸の方をふらふらして参ります。のびのびと羽根を伸ばしてリフレッシュし、よく食べよく眠って野宿は慎み、そして煩悩をチャージしてまた舞い戻って参りますので、どうかご心配なさらずに！（行き先を告げたごく少数からは、またもや「…って、それどこ？」と訊かれましたが）

　珍しいものや美しいものをたくさん見て、お土産がわりに新しい風景を持って帰って参りますね。
　蓬莱ではぐっと深まった秋に冬の気配が混じり始める季節、空気が変わった頃にまた帰山のご挨拶ができることを、今からすごく楽しみにしていますね。
　どうか皆さま、短い不在の間にも、素敵な秋をお過ごし下さいますように。
　では、行って参りまーす♪（大きく手を振りつつ）


【青鳥を下さった芥瑚方へ】

＞学生生活を満喫中のＨ．Ｆさま
　「赤ちゃんじゃん」って、まさに！（笑）　そこは心置きなくしゃぶらせてあげたってよろしかろうに…すぐに大きくなるんだから…と外野ながらわたしも思いました。ぷぷ。（台輔となるとそうもいかないのでしょうが）
　旅先で赤ちゃんや幼い子供と触れ合う機会は思うより多く、カザフ族のパオに泊めてもらったときにはしがみついて離れない子に添い寝までしてもらったことを思い出します。今回もまた、ささやかながらお土産話を持ち帰って参りますねー♪

＞霜月さま
　それがですね！　友人が持ち帰ってきてくれた件の映画のペーパーを見ましたら、主要１０人のメンバーの中に、彼の名前がない…。まさかの通行人とか？！えらいゴージャスやな！！と若干混乱しているのですが、とりあえずは続報を待つといたしましょう。
　原作、おもしろいですよね。わたくしめ、年老いたロシア貴族のおばあさまが特に好きで、今回の配役もそこはばっちり！だったので、ちょっと嬉しくなりました。あ、思い出したらそのつながりで、ダニエル・クレイグの００９シリーズが猛烈に観たくなって参りました…！（ご覧になったこと、おありですか？歴代のボンドシリーズには興味がありませんでしたが、彼のはすごい）

＞シロン葉の紅茶さま
　おお！満を持してのきのこ派のご登場！（笑）　やはりポイントは「すみわけの妙」にあるのですね。うん、すごく分かる気がします。食感もぽりぽりして、イメージがはっきりしてますよね。
　そうか、女の子…。幸か不幸か、おそらく自らを「女の子」と意識して過ごした時期が人生にない、という気がしますので、そこに実感を沿わせるのはいつもすごく難しいのですが、それだけに本当に興味深くメールを拝見しました。眩しくて愛おしい、という気持ちなのかな。それなら分かるかも！
　お見送り青鳥への感謝をお送りしつつ、また無事に戻ってくることをちゃんとお約束して、今年も出奔して参りますね。実はパッキングはこれからだったりして！（笑）

＞かりのさま
　こちらからお礼を申し上げたいのは！　まさに！　龍角散のどあめ！！
　これが今回もまたすごく役に立ってくれたのです。病院に行けなかった週末の喉の痛みを、以前教えて頂いたこの魔法のあめが！随分和らげてくれました。ほんとにありがとう！
　ええと、お礼のトリビアを考えてみました。辺境放浪にはですね、ニベアが最強のお供です！　乾燥しがちな気候で身体はもちろん、顔にだって遠慮なく使えますし、砂漠のようなところではヘアクリーム代わりにもなりますし、リップクリームにもハンドクリームにも、一缶持っていけば何役にもなる！ニベア超おすすめ！
　…とここまで書いて気がついた…　「そもそも普通はそんな場所行かないから」って言われるんだろうな…前にコーヒーびたしになったＵＳＢを無水エタノールで復活させるトリビアをお届けしたときも、「そもそも普通はマグカップに落としたりしない」って言われたのを思い出した…。
　悔しいので、放浪先のおいしいものを写真に収めて、帰国後に「飯テロ」を行うことをお約束いたします。再会の秋の味覚を楽しみに、いってくるねー♪