この春、本国から出張してきた折に、日本製菓界の誇る銘菓・ハッピーターンの虜となって帰国した例の同僚が、先日再び出張にやって参りました。
　出先からオフィスに戻る途中でコンビニに立ち寄ったところ、「何かおすすめはある？」とわくわくした顔で訊かれたので、
　「こっちが『きのこの山』、こっちが『たけのこの里』。兄弟みたいなチョコレートスナックなんだけど、土台がプレッツェルとビスケットというところに違いがあり、それぞれに根強いファンがいます。両者の断絶は思いのほか大きく、うかつに支持対象を明らかにすると深刻な口論、場合によっては武力抗争を招く 恐れがあり、公共における嗜好の表明には非常な慎重を要するというある種の危険物なのでくれぐれも気をつけましょう。ちなみにわたしはたけのこ派だよ」
　と、粛々と訓戒を垂れておきました。

　……とここでですね、この種の二分化はこと食べ物において多く見受けられるのではないかと思うのでございます、愛するマドモアゼル方。
　上記の二大スナックのみならず、そば派＆うどん派、こしあん派＆つぶあん派、絹豆腐派＆木綿豆腐派、ラーメンはしょうゆに限る派＆やっぱり味噌だろう派、ホタテは断然貝柱派＆むしろヒモの部分をよこせ派、ハンバーガーならシュリンプとアボガド一択派＆いやいや肉をダブルでチーズも乗せて派、エトセトラエトセトラ。
　確かに食の好みというのは相性と直結する部分があり、一致によって平和が保たれるのは間違いのないところなのですが、まるっきり正反対でも何の問題もなくやっていける場合も、これまた立派にあるのでございます。
　実は上に挙げた例、どれも前者は相方の日さま、そして後者はわたくしめの好みなのですが、これだけの違いがあってなお、１０年以上も仲良くやってきているのみならず、嗜好の違いを面白がっている部分まであったりします。
　その事実を思うとき、互いの相違に対して寛容になること、それを楽しんで時には違いから学ぶこと、その上で共存することは充分可能であり、だとすれば人と社会の多様性の尊重、ひいては世界平和も決して不可能ではないのではないかと、しみじみグローバルに思われる次第なのでございます。

　ちなみに冒頭の同僚はきのことたけのこを両方購入し、ひとつずつ食べた途端にあっさりと、
　「あ、オレは断然『きのこの山』を支持するね」
　と軽率にも言い放ち、あやうくその場で武力抗争が勃発しそうになりました。
　……ＯＫＯＫ深呼吸、大事なのは世界平和だ。

　マドモアゼル方におかれましては、きのことたけのこではどちらがお好きでしょうか。
　先日またもや一緒に映画を観に行った友人はたけのこ派、
　「クッキーとチョコレートの結合感…あのぴったりとフィットする結合感というものを、たけのこの里においては特別に鍾愛したい」
　と思慮深い面持ちで所感を述べておりました。
　きのこの山派の皆さま方、ご意見を心からお待ち申し上げております。超伏礼。


＞到着のお知らせを下さったＦ・Ｋさま
　今回も無事にお届けできてよかった！　到着のお知らせ、ありがとうございます♪　秋の夜長のおひまなときに、のんびりお楽しみいただければ嬉しいです。
　その後、冷蔵庫のきのこの山はいかが相成りましたでしょうか。わたくしめも上記のあれこれを書きながら、たけのこの里が食べたくなりました…。
　そしてハリセンのお気遣いまで（笑）ありがとうございます。次回はぜひ！こちらで「様」を書かせていただければ…！（ほんとにごめんなさい！）

　

　やっちゃった！　やーっちゃったー！！
　と、ぴょんぴょん飛び跳ねながら御前に参上した本日、喜びに溢れてご報告申し上げたいのは、
　来月の放浪をゲットしました。伝家の宝刀、ザ・見切り発車で。
　ということなのでございます。…てへ（照）。

　先日の雑記から一週間をすぎても蓬莱オフィスのスケジュールの見通しがまるで立たず、だというのに空は日に日に青く高く秋のそれになっていき、本能が出奔の時期の到来を告げているのに、もうにっちもさっちもいかない…！！
　という苦悩の底で、それでも諦め悪く上の空で航空券のチケットを検索していたあるとき、見つけてしまったのですね。特注であつらえたってこうはいかないだろうというくらいに、うってつけな時間とルートの航空券が。
　画面とにらみ合うこと十数秒。気がつけばさくさくと購入プロセスを終えていた。
　という次第なのでございますね。はい。

　あー、もういい！　前後が大変だろうけどもういい！　後のことは後で考える！！
　と晴れやかな気分で虚海を渡って参りました。なのでこちらでも後顧の憂いなきよう、手筈を整えておかねばなりません。
　愛するマドモアゼル方。来月の半ばの２週間ほど、秋の放浪に出奔いたします。それに伴い、通販は１０月８日（日）で休止となります。
　「ならばその間に読むものをおよこしなさい」とお思いの方がいらっしゃいましたら、さくっとお申し込み青鳥をお送りくださいませ。なるべく出発前にお届けできるよう、がんばりたいと思います。
　なお、再開は１１月の予定です。



　……と、チケット購入後に速攻で取り寄せたガイドブックは英語版（日本ではこの地域を扱った本がない）。写真はほとんどなく、ぎっしりと文字情報で埋め尽くされたそれを読みながら、ふと思いました。
　万が一、蝕であちらに流されてしまったら、こういう仕事をすればいいんじゃないかと。
　今までにもこういう埒のないことを考えたことはあり、猛勉強で現地語をマスターした後でなんとかして助成金をもぎ取り、「常世の諸神と宗教観」、あるいは「仙と仙籍の研究」をテーマに学究すれば、好奇心も満足するし、行政及び社会に幾許かの貢献もできるのでは…と思っていたのですが、こういう腹の足しにならない研究が成り立つのは、おそらく雁や奏といった安定した大国での話。またこうした国々では、豊かな庶民のための観光案内などもすでに出版されているでしょうし（日本の江戸時代のように）、むしろこういうものを必要とするのは、これから発展していこうとする慶のような国なのではないかと。
　治世の安定とともに地方の事情も安定して整っていくでしょうし、商用・観光を問わず、人の往来が増えればガイドブックのようなものが重宝されるのは明らかです。それを編集するためには、自分の足であちこちの土地を訪ね、名所旧跡やおすすめルート、名物や特産物などを確かめて紹介する必要がある。社会への還元率もこちらの方が断然高い。わーお！　これこそ趣味と実用をかねた最高のお仕事ではないか！
　と胸を高鳴らせながら、いつ蝕に巻き込まれてもいいように、おさおさ準備を怠らずにいようと誓いを新たにする週末なのでした。

　ちなみに以前、医療従事者の友人は、騎獣がメノウでも肉でも飼葉でも養えるという点に着目し、
　「本来肉食であるはずの妖獣が、飼いならされた途端に肉以外のものを消化吸収できるようになるというのは、医学的見地からすればまこと不可解でならない。捕獲できた暁にはぜひ消化器官を詳しく分析してみなくては」
　と実に冷静な顔で所見を述べ、当方、思わず震え上がりました。なんというプロフェッショナル魂…！そんなこと思いつきもしなかったよ…っていうか、ねえ、分析ってなにするの…？！
　動物愛護的見地から、彼女の手に妖獣が渡らないことを心から願っております。



＞本日のうっかり。
　前回に予告まで出しておきながら、上記のあれこれですぱーんと失念してしまった「きのこの山とたけのこの里」につきましては、また近日中に。あきらかにひっぱるほどの話でもなさそうなところがまた、申し訳なさを倍増させております。

　

　湯船にお湯が溜まると、「お風呂の用意ができました♪」と無機質な女性の声でアナウンスが入るようになっているのですが、あれを聞くたびにいつも思うのです。もっと斬新なご案内だったらいいのにー！と。
　ただいま一押しの設定は、戦国時代です。内陸の東寄り、海のない小国の大名。山深い屋敷の奥で、質素でも量だけはある夕餉を終えた後、座敷でくつろぐ障子越しに響く野太い声。
　「お館様、湯殿の支度が整いましてござる！」
　こんなアナウンスが入ったら、「うむ、今参る！」と力強く頷いて着衣を脱ぎ捨て、元気よくお風呂に向かうんだけどなー！！と、このように思う次第なのでございます。お元気ですか、皆々様。

　…と、こんなやくたいもないことを細部にわたって妄想するときは大抵そうであるように、蓬莱オフィスの仕事がめっちゃ多忙です。あまりのことに先の見通しが立たず、恒例の秋の放浪に暗雲が垂れ込めております。これを一言でいえば、生命の危機です。
　命の泉の放浪なくして、来年の新刊がどうして製作できようか！　煩悩もエネルギーも枯渇しちゃうよう！！　と突っ伏して泣き喚きながら、電子の虚海を渡って参りました。めそめそ。

　今週一週間、ちょっとがんばってみて、ぎりぎりまで希望を捨てずにいようと思います。そうして次回には、もうちょっと明るい雑記をお届けできるようにしたい！　いつもみたいなばかばかしいやつを！
　愛するマドモアゼル方。９月（！）に入って、朝夕にぐっと秋の気配が立ち込めるようになって参りました。空気がだんだん軽くなって澄んでくる、毎年のこの感じが大好きで、秋本番を迎えるこの月の初めに、皆さまが素敵な一週間をお迎えになられますよう、心からのご挨拶を申し上げる次第です。
　ＸＸＸ、アーンド○。


＞なくても全然困らない次回の予告
　きのこの山とたけのこの里。

＞到着速報を下さった北海道のＨ・Ａさま
　新しい土地での生活をとても新鮮に楽しんでいらっしゃるご様子が伝わってきて、なんだかわたしまで嬉しくなりました。新しい環境を楽しむことができるのは、それだけで本当に嬉しいし幸せなことですものね！　そんなお手元にも無事本が到着したと伺って、ひと安心です。お知らせ、ありがとうございます♪　そちらはそろそろ朝晩が寒く感じられる頃でしょうか。ゆっくり一息つかれるときのお供になれば、こんなに嬉しいことはありません。どうぞお楽しみ頂けますように…。