かつて１００-Ｑ�Uでも申し上げましたように、恥ずかしながら、これまでおよそ小説という形式で文章を書いた経験のなかったわたくしめ。
　好んで読む本は、ほとんどが人文学や紀行文。何かを書くとしても、三段論法や箇条書きといった大変殺風景な論文や報告書の類ばかりで、「　」つきで台詞の入った何かを書く日が来ようとは、それまで考えもいたしませんでした。
　加えて、ひっそり俯き加減に申し上げますなら、自分の日本語に対する拭いがたい不安がございます。どうやら卵果として煩悩に流された虚海麒麟らしい…という出自は別としまして（笑）、幼い頃からその蓬莱も離れて暮らすことが多く、３つほどの言語の間を行ったり来たりする日々でした。（先日はからずも露呈してしまった「ご挨拶ハグ」の性癖は、この辺りに由来しております…（涙））
　もしかしたら細かいニュアンスまで把握し切れていないかも知れないという恐れから、最初は日本語で何かを書くこと自体に怯みました。煩悩に逆らえず書いてしまった『暗恋桃花源』は仕方ないとして、あのままでしたら、『自由、夜』を書いた辺りでどうにか折り合いをつけ、以後の更新には進まない公算が大だったように思われます。

　そうして今回の投票を終え、結果を綴じようとファイルを開いたところ、サイト開設直後の旧ＢＢＳのログが出て参りました。開設したその日に最初のお書き込みを頂き、以後幾つもつらなる「こんにちは、初めまして」のご挨拶の数々…。
　思わず時間を忘れて文字を追いながら、しみじみと感じられたのは、「ああ、これが理由だったんだ…」ということでした。
　それまで『ＢＢＳ』という機能自体を知らず、インターネットは仕事のツールとしか考えなかったわたしに、文章を書くことの楽しさを教え、それを媒介にしたコミュニケーションの豊かさを教えて下さったのは、他でもない、今こちらをご覧のマドモアゼル方おひとりおひとりです。
　日々ご訪問下さる証として回っていくカウンター、サロンと名づけられたＢＢＳにお書き込みを下さる芥瑚方、そして水面下で頂くたくさんのメール。その内のどれが欠けても、ここに到ることはできなかったと心底感じられるのです。

　開設からおよそ一年半が経ち、以来ご訪問下さる方々の蓬莱ライフにも、さまざまな変化がおありだとお見受け致します。
　新しい仕事を始められた方々、心機一転違う道へ進まれた方々。新しいご家族をお迎えになった、あるいはお迎えになる方々。そして、苦しいことをさまざまに乗り越えて先に進まれる方々の姿を拝見するたびに、ご縁とは本当に何と不思議なものだろう…と深い喜びを覚えずにはいられません。
　この先自分自身にも予期しない何かは起こるかも知れず、けれどそれでもサイト運営と書くことの喜び、それらを通して頂いたご縁を末永くつないで行ければ…と、四回目の投票を終えた今、改めてしみじみと思われます。
　頂いた票やコメントは、文字通り真珠のような宝重です。お寄せ下さった温かいお心に深く感謝申し上げ、この先も長いおつきあいを願いつつ、ささやかな謝辞に代えさせて頂きますね。
　そして最後にもう一度、こちらをご覧の方々おひとりおひとりに、限りなく愛に近いご挨拶をお送りいたします。
　

深い感謝を込めて

天山慶路・暁子 拝

2005年8月22日