当サイトが満６歳になる来週土曜の１月３０日、いよいよあと一週間後に迫った「リアル芥瑚の集い・横浜支部」を前に、本日はまず正面玄関に専用BBSを連結して参りました。
　こちらはすでにご参加の方々にお使い頂いておりまして、当日遠方から見守って下さる方々にも、広くお楽しみ頂ければ本当に幸せです。
　ご参加芥瑚の方々、こちらで引き続き事前のご歓談をお楽しみ下さいねー♪
　そしてすべてのマドモアゼル方。当日はお越しになれない方々も、どうかお気軽にご参加を！　この臨時サロンを通して、ご自由に閲覧・伝言・コミュニケーションをお楽しみ下さいますように…。


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　先日、わが妹が偶然に、故・辻邦生の知人であったという方のお話を伺う機会に恵まれたそうです。
　おお、辻邦生…！　小説をほとんど読まない麒麟が、唯一敬愛する作家！　彼の連作短篇集『ある生涯の七つの場所』は、個人的な読書史に燦然と輝く金字塔です。
　その方が故人の書斎を見せて頂いたとき、南欧を思わせる光に溢れた室内の端然とした佇まいを前に、「ああ…こうした空間からあの美しい建築物のような作品群が生まれるのは、まったくもって当然のことである」と深く納得なさったそうです。
　うんうん、そうであろうそうであろう…！　と憧憬のため息をつきつつ、我に返って周囲を見渡せば、８０×５０cmの小さな木製テーブルに、PC・愛機ハンキョがあるのみ。マウスの手元に何故か鎮座するアンモナイトの化石。目を上げれば、額に入ったマレーネ・ディートリッヒの１００万ドルのおみあしが。

　……こんな空間からは、どう頑張っても煩悩しか生まれまい。
　と、これまた深く納得した次第です。


　さて、愛するマドモアゼル方。
　上記の妹は、ちょうど１年前の５周年企画でお届けしたQ&Aにて、
　　「『回帰熱』という作品がありますが、あれ、本来なら姉の専門分野のはずなのに、どうもモザイクてん
　　こ盛り、いろいろぼかして逃げ切ったんじゃないかという疑惑が拭えません。ぶっちゃけ自分に嘘を
　　つきましたか？」
　というバズーカ砲をぶっ放し、姉を昏倒せしめた魔弾の射手です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……なんで分かった。

　という本音はともかくとして……ほんとになんで分かったんだ？……いやいや、本題はそこじゃない。
　愛するマドモアゼル方。今年５月に発行を予定しているR１８指定の本、書き下ろし２作に加えて収録予定なのが、この『回帰熱』なのでございます。ふー。

　改訂作業を始めてすぐに、しみじみと分かったのは、いやはや、ほんとにあちこちぼかして書いていたかも…という納得、そしてサイト更新から何年経とうと変わらずに、本来の映像を傷ひとつなく保っていた煩悩シアターのしぶとさです。
　かくて第一回の改訂を終えた結果、文字数は３０００字以上の増加、加えて変態度もアップ。
　……した気がする。
　　
　しかしながら、全文残らず書き直し、当時は削ってぼかしたあれこれを書き加え、心ゆくまで改訂できたことに満足しているのも確かなのでして、ここは一発、堅褌一番の心持ちで書き下ろし作品の第二・第三改訂を進め、気を抜くことなくケモノ道に邁進したいと存じます。
　……でも、よりによってリアルの拝謁を一週間後に控えたこのタイミングで、何故この話題なのだろう。

　と、ハンカチかみかみ涙に暮れる冬の夜。
　集いにお越しの芥瑚方。当日の会場でそこはかとなく変態めいたマウンテン・ゴリラを見つけても、なにとぞ「回れ右」だけは踏み止まって下さいますよう、衷心よりお願い申し上げる次第でございます。
　深々と伏礼。



　という訳でして、失礼ながらここで私信をば＞　蓬莱の名画師・日さま：
　　上記の経緯により、文字数と変態度がアップした『回帰熱』、こちらの挿絵はすでに打ち合わせ済み
　　ですが、改訂版もご入用ですか？　えーと、つまり…念のために。


　

　【前回のあらすじ】
　　新年早々打ち続くプチ珍事のはてに、全煩悩を詰め込んだUSBメモリを、カフェオレの中に落として
　　しまった麒麟。脇から延びてきた悪魔の手が、それをさらにアルコール漬けに！そしてシェイク！


　かくて哀れなUSBメモリに心ゆくまで攪拌をかました挙句、相棒の申しますには、「これはアルコールを用いた水抜きである」と。こうしてしばらくアルコール漬けにした後、おもむろに取り出して乾燥させれば、水浸しになったメモリスティックが回復する場合もあると。
　……しかし。
　透明な液体にとっぷり漬かったメモリを前に、こんな状態で復活するとはどうして信じられましょうか。
　背を向けてこたつにもぐり込み、麒麟は泣きました。

　かくてアルコール漬けにすること丸二日。さらに取り出して宙吊りにし、乾燥させること五日半。
　部屋の中をぐるぐる回って心を落ち着けた後、PCを立ち上げて、メモリスティックをプラグイン。……明滅するランプ。そして数秒後、ウィンドウが開いて、ずらりとデータを表示。

　　　　　　　　　　　　　　　　水没したUSBメモリ、まさかの完全復活。


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　おお、心から愛するマドモアゼル方！
　将来、まかり間違って皆さまが同様の災難に遭われた場合に備えて、麒麟は心からこの方法をお勧めしたく思う次第なのでございます。
　しかるに、USBメモリを洗濯してしまった or 水の中に落っことしてしまった場合：

　（１）　すみやかに薬局に走り、「無水アルコール」を買い求める。　…１瓶で１４７０円でした。
　（２）　ビニール袋か密閉容器にそれを注ぎ、水害に遭ったUSBメモリを漬け、攪拌する。
　　　　　　…これは水抜きのため。細部に染み込んだ水分を、水溶性かつ揮発性の高い無水アルコール
　　　　　　　と入れ替えて、後で蒸発させるためです。
　（３）　１−２日間ほど漬け込んだ後、充分に乾燥させる。
　　　　　　…大事を取って多めに５日吊るしました。心配なら、さらにドライヤーの冷風で乾燥を。

　これで多くの場合、水没したメモリは復活するそうです。（牛乳入りのカフェオレからも見事に復活）
　水浸しになった携帯電話さえも、この方法で見事復活（！）した例があるそうです。
　愛するマドモアゼル方。万事休す、と目の前が真っ暗になった場合には、どうか無水アルコールの存在を思い出して下さいますように…。


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　全煩悩データ、かくて余すところなく完全復活。
　あまりの安堵の大きさに、喜ぶというよりも呆然としてしまい、麒麟は再びこたつにもぐり込んで泣きました。そこへ相棒が咳払いして申しますには、
　「…ということで、メモリは無事復活。なので先日、君のセーターを洗濯機で洗ってだめにしてしまった件についても、これに免じて差し引きゼロということにしてもらえないだろうか」

　OKOK没問題。たとえ手持ちのセーターを根こそぎ火あぶりにされても、喜んでチャラにしますとも。



　……という次第でして、愛するマドモアゼル方。
　一年分の厄払いを松の内にふっ飛ばし、わが煩悩も雄々しく復活を遂げました。
　不覚にも後れを取った分を取り戻すべく、週末は煩悩シアター舞台裏に立ち戻り、大幅な改訂作業＠冒頭の収録作品に取り掛かろうと思います。
　「R指定の本に収録するサイト上の作品というと…　もしかしたらあれかしら？」
　とお尋ね下さった芥瑚方。どんぴしゃりでございます（笑）。
　
　これについても来週辺りにお話しするといたしまして、すべてのマドモアゼル方。寒波の到来にもお身体をいたわられ、どうかよい週末をお過ごし下さいますように。
　そしてリアルの集いにお越し下さる方々も、当日までは早くもあと２週間。くれぐれもご自愛下さって、会場でお目にかかれることを心から楽しみにしておりますね。

　ああ、煩悩ってほんとに素晴らしい…！！！　（←抑えていた喜び炸裂とともに舞台裏へ退場）　

　

　「その橋は　まことながかりきと／旅終りては　人にも告げむ」。

　この『千曲川』という詩が語るところの、
　　「その橋がどんなに長く辛いものであったかは、旅をすべて終えるまでは誰にも口にすまい」
　という一節は、今日までの約２週間の麒麟の心持ちを、余すことなく代弁してくれる賢者の言葉でございます。いやはや、長い苦難の道のりであったことよ…（涙）。
　おお、愛するマドモアゼル方！　どうかお聞き下され。



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　輝かしく新年を迎えたはずなのに、何故か麒麟はあいつぐプチ珍事に見舞われておりました。
　新年だから餃子を作ろう！と葱を刻めば、指までスライス。一度しか着ていない新品のモヘアのセーターを洗濯機で洗われてダメにされ、外出先でジーンズをびしょぬれにして寒風の中を震えながら帰ってきたり…
　と、ひとつひとつは小さいながらも、続けて襲われると結構なダメージです。
　何や、あれやな、気合が足りんのかいな…と首をひねりつつ、珈琲を飲んでいた一週間前の夜。真打ちはがっつりやって参りました。
　新旧の煩悩データ満載のUSBメモリを、あろうことかカフェオレのカップの中に落としてしまったのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見事なくらいに、ぽっちゃん、と。


　過去数年を遡っても、あんなに心臓が凍りつく思いをしたことはありません。
　……このメモリの中には、ほぼすべての煩悩データが詰まっている。
　過去の本の最終原稿からサイト未掲載の完成ストック作品、まだ形にしていない文章の断片の山にタイトル・リスト、さらには現在進行中の新刊の最新原稿まで。
　しかもそのほとんどは、どこにもバックアップを取っていない。
　
　正直、もうだめだと思いました。
　数年分のデータを失ったこと自体も考えられないほどの痛手ですが、何よりこの衝撃から立ち直ることができるだろうか。また新しく始めようという気持ちになるとしても、少なくとも数週間や数ヶ月では無理だ。新刊どころか、もう立ち直れないかも知れない…と。
　
　心中で葬儀の準備を始めた麒麟を不審に思ったのか、通りかかった相棒が訳を聞いてきましたので、黙ってびしょぬれのUSBメモリを見せたところ、さすがに声を呑んだようでしたが、「…いや。諦めるのは早いと思う」とか何とか呟く。すっかりやさぐれた麒麟は鼻で笑いました。
　ふん。古今東西、電子機器は致命的に水に弱いと決まってる。ここまでずぶぬれになったものを、どこの神仏が救済できるってんだ！　やれるもんならやってみやがれちくしょうめ！

　それを頭っから無視して姿を消した相棒は、数分後、瓶を片手に薬局から戻って参りました。瓶のラベルは「無水アルコール」。１００％に近い純粋アルコール溶液です。
　その液体を密閉容器にどぼどぼ注いだ奴めは、哀れなUSBメモリをその中に放り込んだのです。あまりのことに昏倒しかけた麒麟の前で蓋を閉めると、容器ごと景気良くシェイク。…シェイクだと？！

　液体に次ぐ液体責め！加えて攪拌！　この上さらにダメージを喰らわそうというのか、このひとでなし！！



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―以下、次号に続く―　

　

　…７日を過ぎてはいささか不似合いではございますが、新年最初のご挨拶となれば、やはりこれを申し上げねば気持ちが引き締まりません。
　愛するマドモアゼル方。新年明けまして、心からおめでとうございますー♪

　お正月休みには、皆さまゆっくり羽根をのばされましたでしょうか。
　はい、麒麟も年末には最後の海を楽しんで、家族や友人とのびのび過ごして参りました。年が改まると気分も煩悩もすっきりさっぱりリフレッシュされた心地になるのが不思議で、こうしてまた虚海に戻ってきて、新刊原稿の改訂作業を進められるのが嬉しくてたまりません。くーっ！ひゃっほう♪
　
　この新しい年が、皆さまのもとに、数え切れないほどたくさんの良いものを運んできてくれますように。
　そして、頂いているご縁が今年も続いていきますように、これから出逢う方々と良いご縁が結ばれますように、一年の始まりに当たって心からお祈りしたいと思います。


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　そして、幾つかのお知らせをまず先に。
　今月３０日に迫った「リアル芥瑚の集い・横浜支部」。この正式なご案内状を、昨日の夜、ご参加の方々にメールでお送りいたしました。
　万が一、お手元に届いていない場合には、お手数ですがご連絡下さいますように…。

　そして年末年始のご挨拶青鳥を下さったマドモアゼル方。同じく昨日、サロンBBSにお返事青鳥をお届けして参りました。どうぞお受け取り下さいましねー♪
　忙しい時期、ゆっくりと休まれている時期に、わざわざPCを立ち上げて送って下さったお便りが、本当に嬉しく身にしみました。今年もいっそう煩悩道に精進しよう！と、得体の知れないエネルギーがふつふつと沸いてくるのは、まさしくこういうときです。
　…てへ（照）。


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　さて、愛するマドモアゼル方。
　こうしてPCに向かう麒麟の背後では、あの名作・『もののけ姫』が地上波で放送中でございます。
　この作品、「宮崎作品で個人的なベストを挙げなさい」と言われたら、最後まで候補に競り残るだろう逸品なのですが、愛するマドモアゼル方。この映画の英語吹き替え版をご覧になったことがおありでしょうか？

　これは確かアカデミー賞の長篇アニメーション部門にもノミネートされ、『プリンセス・モノノケ』という英題で全米公開されたときには、全編英語の吹き替えが行われました。
　そして、この傑作に感銘を受けた米国配給元の気合いの表れでしょうか。この声優陣の顔ぶれが、これまたまったくもって素晴らしい！の一言に尽きるのでございます。
　
　主役の二人から脇を固める各人まで、ほとんどが当時の実力派ハリウッド俳優が占める陣構え。
　中でもひときわ素晴らしいのが脇役の配役で、エボシ御前には名作『グッド・ウィル・ハンティング』で温かく知的なヒロインを演じたミニー・ドライヴァー。惚れ惚れするような、歯切れよく凛々しい台詞回しです。
　美輪明宏が圧倒的な吹き替えを見せた狼神モロには、TVシリーズ『Xファイル』でスカリー捜査官を演じたジリアン・アンダーソン。タタラ場のリーダー・トキ役には、『マトリックス』にも出演したジェイダ・ピンケット＝スミスが、これ以上ないほどイメージ通りのいきいきとした生命感を吹き込んでいます。
　そして白眉は、ジゴ坊役のビリー・ボブ・ソーントン。映画『ラブ・アクチュアリー』で米国大統領を演じていた彼は、かつてアンジェリーナ・ジョリーの夫でもあった名優なのですが、いやはや、ここでも痺れるほどに渋く味わいのある演技で、ジゴ坊という一筋縄では行かない人物像に、複雑で深い陰翳を与えています。

　そして、英語に翻訳された台詞にも、日本語版とは違った印象があります。
　たとえば冒頭でアシタカが故郷を離れるとき、カヤという娘がお守りの小刀を渡す場面があるのですが、日本語版では「…本物の妹なのかな？」という風に聞こえたこの台詞が、英語版でははっきりと、恋しい相手と別れる娘の情緒を帯びたものに変わっていて、アシタカとはおそらく許婚の関係だったのだろう…と分かるのですね。
　さらに物語のクライマックス近くで、タタリ神と化した猪の長から娘サンを救い出そうとするモロがアシタカに語りかける、「おまえにサンが救えるか」という台詞。これは "Can you save the girl you love?" と訳され、アシタカとサンの間にある絆はすでに「愛」なのだ、と明確に定義されているのです。

　英語と日本語、どちらの言語にも独自のニュアンスと余韻があり、どちらも違った意味でしみじみと素晴らしいと感じられます。
　まったく違った二つの言語によって、それぞれに違った印象を湛えて立ち上がってくる物語を見るとき、滅びゆく古い神々と山を切り拓こうとする人間のどちらをも、決して簡単な善悪としては描かなかったこの名作の奥行きがいっそう増すように思われて、手元にDVDを持っているというのにブラウン管にかじりつかずにはいられない冬の夜なのでした。
　もしかしたら国内発売のDVDにも、音声切り替えで英語版が入っているのではないか…と思いますので、ご興味がおありの方、どうぞご覧になって下さいますように。


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　およよ。新年のご挨拶のはずが、随分と長くなってしまいました。
　しょっぱなから快調な、これすなわち今年もまた煩悩道を邁進せよ、という天の啓示と受け止めて、いそいそ煩悩シアター舞台裏にもぐりたいと思います。
　そろそろ新刊に収録する作品なども、これから少しずつご紹介できれば…と思いつつ、愛するマドモアゼル方。今週末は三連休、どうか良い休日をお過ごし下さいますように、今年最初のXXXを込めてご挨拶申し上げます。もいっこ、X。


　PS：　先日、こちらで押し寿司への愛を叫んだ際に、熱い共感（！）をお寄せ下さった同志方＠芥瑚連・
　　　　押し寿司愛好会の皆さま。鯖寿司の老舗・花折のウィンター・スペシャル、千枚漬で巻いた「花折峠
　　　　千枚巻」が現在限定発売中だとのことでございます。お知らせハガキを握り締めて、麒麟も週末
　　　　さっそく新宿高島屋に走る所存。うー、おなかがすいてきたであります青将軍！